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よいデザインには、マグネットのように吸い付く関係性がある。
人物の視線、絵画の透視線と光、書籍の装丁。要素の間にある「見えない引力」から、よいデザインの一つの見方を考えます。

よいデザインって、どんなデザインでしょう? 難しいですよね。考えてみたことはありますか。答えは一つではありませんが、無数にある見方のうちの一つとして、「マグネットのように吸い付く関係性」という切り口はいかがでしょうか。
「吸い付く」のは、要素の間に理由があるから
人物の写真を使った広告を想像してみてください。人物が右を見ていて、その視線の先に見出しやボタンがある。矢印を描かなくても、私たちは人物の見ている先を追いかけます。そこに行動のきっかけが置かれていると、次に見る場所が自然につながります。
もちろん、人物の視線だけではありません。身ぶり、光、形の向き、余白も、離れた要素同士を結びます。一つずつの要素を整えるだけでなく、「これを見たあと、なぜ次にそこを見るのか」を考える。画面に描かれていない線を設計する感覚です。
絵画にも、見えない引力があります
このような関係性は、広告が生まれるずっと前から絵画にも見られます。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を見てみましょう。天井や壁面の線を延ばすと、キリストの右こめかみ付近にある消失点へ集まります。下の図では、読み取りやすい線をピンクでなぞりました。人物が大勢描かれていても、空間の骨格が中心の位置を教えてくれます。作品を所蔵する博物館も、この消失点と透視法について解説しています。[博物館の解説]
中心人物を大きく描くだけが、中心を伝える方法ではないのですね。周囲にある建築の線が、その人物を見る理由をつくっています。
光と指先が、離れた人物を結びます
もう一つ、カラヴァッジョの『聖マタイの召命』をご覧ください。右から入る光が卓につく人々を照らし、右側のキリストは手を差し伸べています。ローマ市の解説でも、光がキリストの呼びかけからマタイの反応へ、右から左に注意を運ぶと説明されています。[ローマ市の解説]
光と手は同じ方向に働いていますが、完全に重なってはいません。光が人々に注意を向けさせ、手の動きがその場面を「呼びかけ」として読ませます。異なる要素が、それぞれの役割で一つの場面を結んでいるのです。
etomojiの制作でも、要素の関係に意図があります
絵画の構図を、そのまま広告や本に写すという話ではありません。何を先に見て、何に気づき、手に取ったあと何が起こるか。一つの制作物の中で、要素がどのようにつながるかを考える点は共通しています。
たとえば、etomojiが装丁を担当した書籍『鬼滅夜話』。黒を基調に、登場人物たちを想起させる色と文様を細長い区画に配し、中央には白い明朝体の題字を置いています。色彩の広がりが作品世界への入口となり、中央の題字が書名へと注意を集めます。本体のマットな質感と、帯の光沢にも差をつけました。
関係は表紙だけで終わりません。開いた内側には、読者が実際に遊べるあみだくじがあります。店頭で目に留まること、手に取って質感を感じること、開いて参加すること。その順番まで含めた装丁の意図を、制作実績ページで紹介しています。
要素の「間」を見てみませんか
デザインを見るとき、写真はきれいか、文字は読みやすいかに加えて、「これを見たあと、なぜ次にそこを見るのだろう」とたどってみてください。人物の視線がコピーにつながり、コピーから次の行動へ進む。あるいは、本の色と質感が、ページを開く体験につながる。要素の間に理由があると、目も気持ちも自然に動きます。
その「どうにもそうなるしかない」流れを、ここではマグネットのように吸い付く関係性と呼びました。よいデザインを考えるための、一つの見方になればうれしいです。
図中の線は構図を読み解くためのガイドです。画家の制作手順や、鑑賞者全員の実際の視線経路を示すものではありません。
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